買収する規模が大きくなるにつれて、必要な調達金額も増え、海外からも募集を開始するようです。単なる成長だけではなく、グローバル化も急速に進みそうです。(新井)
海外市場における新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ
当社は、2020年10月22日開催の当社取締役会において、海外市場における新株式発行(以下「本海外募集」といいます。)及び株式売出し(以下「本海外売出し」といい、本海外募集とあわせて「本海外募集等」といいます。)に関し、下記2.及び3.のとおり決議いたしましたので、お知らせいたします。
記
1.本海外募集等の背景と目的
■当社グループについて
当社グループは、2009年にソフトウェアテスト事業を開始して以来、エンタープライズ領域からエンターテインメント領域に至るまで、多様な業界においてソフトウェアの品質保証サービスを手掛けてまいりました。当社グループの提供するソフトウェアの品質保証サービスには、ソフトウェアテストのアウトソーシングを担うだけでなく、これまでに蓄積してきた「品質」に関する知見をもとにしたコンサルティング、PMO、グループ会社と協同したワンストップサービスの提供まで、多岐にわたっております。
当社グループが事業を展開する日本のIT市場は、経済産業省2019年情報通信業基本調査によると、約15兆円規模の市場です。また、ソフトウェア開発データ白書をもとにすると、ソフトウェア開発プロジェクトにおいて、およそ3割がテスト工程に費やされており、当社グループの主力事業であるソフトウェアテストは5兆円規模の潜在市場があると算定することができます。一方、同市場におけるプレイヤーがほとんどいないことから、ソフトウェアテスト市場は「ブルーオーシャン」であると考えられます。
その「ブルーオーシャン」において、リーディングカンパニーとしてのポジションを確立している当社グループは、先行者利益の獲得やリーディングカンパニーとしてのブランディング強化、そして競合の出現を防ぐような参入障壁の強化などを目的に、これまで積極的な売上高拡大に取り組んでまいりました。今後もリーディングカンパニーとして、引き続き既存事業の成長によるトップラインの成長に努めつつも、さらなる付加価値の向上や、企業としての成長にも取り組んでおります。
具体的には、売上高1,000億円を目指した中期成長戦略「SHIFT1000」を策定し、営業体制の強化や様々な課題解決手段をもつ企業のM&Aに取り組むことで、品質保証を軸としたサービスの拡充を推進してきました。加えて、さらなる企業成長と価値向上に向け、ソフトウェアテストの専門企業から顧客の売れるサービスづくりを支援する企業へとブランディングの転換も推進し、これまで以上に、お客様のビジネス成功にコミットするよう注力しております。
また、「無駄をなくしたスマートな社会の実現」をビジョンに掲げる当社グループでは、売上高1,000億円はビジョンの実現の通過点であり、今後売上高5,000億円、1兆円を達成するよう事業拡大していきたいと考えております。そのために、品質保証事業を軸としつつ、ITガバナンスの構築やUI/UXを含むデザイン、マーケティング、開発、ネットワーク環境の構築など幅広い機能を持つ会社をM&Aを通じてグループにお迎えし、サービスポートフォリオの拡充に積極的に取り組んでまいりました。当社グループはIT業界において必要とされる領域に幅広く対応できるよう、M&Aや採用などの手法を用いて強化に取り組んでまいりました。
■本海外募集の目的
これらの成長に向けた戦略を実施するため、当社グループは、積極的かつ機動的にM&Aを実施してまいりたいと考えております。積極的かつ機動的にM&Aを推進するためには十分な資金余力・財務基盤が必要であることから、本募集を実施させていただく運びとなりました。なお、今後M&Aの実施先として検討を進めているのは、以下の基準に該当する会社となります。
1.独自で作成したIT業界のマッピング(図1)と照らし合わせた際に、当社グループにとって新しい商材を持っている企業
1. 優秀なエンジニアが在籍していながら事業継承に課題を抱えている中小IT企業
2. 事業会社の顧客を持つ大型プライムベンダー2.プラットフォーム事業の構築に際し、必要となる商材(ヒト・モノ・カネの情報)を持っている企業
(図1:独自で作成したIT業界マッピングに、SHIFTおよびそのグループ会社の機能を当てはめたマッピング)
また、上記いずれかの機能をもち、以下4つの意思決定基準についてもクリアした会社について、当社グループにご参画いただいております。
1.付加価値が高く、今後の単価向上が見込める
2.顧客母集団を活用できる
3.のれん負けせず、すぐに利益貢献できる
4.購入価格が割安(EBITDA5倍~8倍程度を目安)こうした厳格な基準を設けながらも、条件に該当すると判断された企業については迅速にM&Aを実施し、当社グループのさらなる成長に向け機動的に動くための資金余力・財務基盤を構築したく、本募集を実施させていただきます。
また、当社グループはM&Aに積極的に取り組むため、専門部隊を設立し、PMIの工程を仕組化してまいりました。当社グループ役員が参加する経営合宿の定期開催によるビジョンの共有や、採用基盤・人事管理ツールの共有による会社基盤強化などによる、「求心力」強化についても実現しております。加えて、SHIFT単体としての成長だけでなく、参画したグループ会社それぞれが、新たなサービス体制・付加価値・強みを獲得し、結果として成長していることも特徴です。実績として、グループ会社全体の年次平均成長率は120%を達成しております。
以前より、これらの成長に向けた戦略を実施するため、当社は積極的に資金調達に取り組んでまいりました。2019年度には第三者割当による増資を実施し50億円の資本を調達、2020年度には銀行の借入により40億円の負債を調達し、計約100億円程度を調達いたしました。調達した資金を用いて、2020年度は計4社(株式会社分析屋、株式会社リアルグローブ・オートメーティッド、株式会社DECEM、株式会社エスエヌシー)、2021年度はこれまでに計2社(株式会社CLUTCH(以下「CLUTCH」といいます。)、株式会社ホープス(以下「ホープス」といいます。))のM&Aに成功しました。
結果、2019年度から2020年度にかけて調達した約100億円は、直近2年間に参画したグループ会社の買収のため投資されました。参画したグループ会社はいずれも、今後の成長に必要な機能・人材・顧客基盤などを備えており、今後のグループとしての成長を加速させることが期待できるものであります。
これらのグループ会社の参画により、当社グループとしての売上高成長はもちろん、サービス体制の拡充を含むグループ会社と当社単体のシナジー効果が確認されております。例えば、当社とグループ会社が「ONE-SHIFT」として一丸となる案件の獲得により、グループとしての付加価値の向上を実現しております。
なお、ご参考までに、各子会社の基本情報については、当社ホームページの「グループ会社(リンク:https://www.shiftinc.jp/company/group/)」ページをご確認ください。
また、直近のホープス(取得価額:3,058百万円、直近年度の売上高:5,069百万円)のM&A事例が示しているとおり、当社がM&Aのターゲットとする対象企業の規模は大きくなってきております。実際に、これまでに検討してきたM&A案件の中には、売上高100億円以上規模の会社が2社、50億円以上100億円未満規模が1社、10億円以上50億円未満規模が35社存在しております。このように、より規模の大きい案件取得の可能性が高まっております。
加えて、コロナ禍により、当社グループにとってのM&A環境が好転しております。多角化経営を進めている企業のうち、コロナ禍で特定事業の売上が落ちたことから、事業を整理せざるを得なくなった企業からの案件数が増えていることに加え、上記のとおり、積極的なM&A戦略が評価されてきたことや「SHIFTグループに参画したら成長する」というブランディングも確立されてきたことによる事業会社/フリーエージェント/仲介会社からの持込案件数も増加しております。M&Aに関する検討案件数が拡大することで、これまで以上に幅広い可能性が生まれると同時に、当社グループが基準として定めている基準に合致すると判断できる案件があれば、機動的に対応することができるよう資金余力・財務基盤の確保が求められます。このことから、本海外募集を実施させていただく運びとなりました。
■本海外募集の選択理由・使途
資金調達を実施するにあたり、既存株主やマーケットへのインパクトを最小限にとどめるため、Accelerated Book Building(通称「ABB」)と呼ばれる手法を用いることを選択しました。また、当社グループにとっても、迅速に条件等の決定を進められるため、不確定要素を限定的にとどめられることも、本海外募集を選択した理由に挙げられます。加えて、本海外募集を実施することにより、海外投資家層の拡充をはかり、株式流動性の向上にも資すると考えております。
また、資金使途については、本海外募集による調達で2020年9月のM&A等で生じた借入金の返済及び過去のM&A等により生じた借入金の返済を行うことにより財務基盤強化を図ることと、当社グループ会社の増加に伴う基盤インフラの強化、成長事業への安定した資金供給等による企業価値向上と事業拡大に向けた資金の確保が目的となります。
資金使途の詳細については、「<ご参考>2.調達資金の使途」をご参照ください。
なお、本海外募集と同時に当社代表取締役社長丹下大による本海外売出しが実施されます。本海外売出しは、丹下大が2020年10月7日にストックオプションを行使したことに伴う納税資金を確保したいとの意向を当社の海外株主層の拡大及び株式流動性の向上というニーズに合致させることができるものとして実施するものであります。なお、丹下大は本海外売出し後も引き続き当社の代表取締役社長として、本海外募集による調達資金の活用により、当社グループの企業価値及び株主価値の最大化に繋げるべく当社の経営に全力を注ぐ所存である旨、当社に表明しております。