株式会社SHIFTはソフトウェアの品質保証・第三者検証サービスを展開している会社です。そのためテスト、品質保証だけが仕事……そんな風に誤解していませんか?
実は、年間100億円もの資金を調達し(2019年度)、積極的にM&Aを行っているのもSHIFTの大きな特徴のひとつ。
M&Aをおこなう目的は、世の中に提供できるサービスの領域を広げるため。ソフトウェアテスト事業から開始し、品質、コンサルティング、保守・運用までできるようにしていくことで包括的にクライアントに価値提供を行っています。
クライアントは金融、小売、流通などのエンタープライズからWEB、ゲーム業界向け多岐にわたっており、業界ごとの様々なニーズに対応するため、積極的にM&Aを進めています。
では、なぜソフトウェアの品質テストを主軸とするSHIFTが、M&Aを積極的に行っているのでしょうか? ここではSHIFTの手掛けるM&Aの特徴や方法論について紹介します。
M&AでIT業界を変える? SHIFTがM&Aを進める理由とは
SHIFTは2019年5月に、M&A仲介で実績No.1のリーディングカンパニー、「株式会社日本M&Aセンター」と業務提携を発表。
2019年度には100億円を調達し、「株式会社アッション」「株式会社さうなし」「株式会社SHIFT PLUS」「株式会社システムアイ」「株式会社分析屋」の5社をM&Aにより子会社化してきました。
また2020年度もその勢いはとどまらず、「株式会社リアルグローブ・オートメーティッド」「株式会社ナディア」「株式会社xbs」「株式会社CLUTCH」の4社を買収。グループ会社はすでに25社を超えています(2020年9月現在)。
それでは、SHIFTはなぜこのように積極的にM&Aを進めるのでしょうか?
その理由は、一言でいうと「IT業界を変えるため」です。
SHIFT代表取締役社長 丹下大氏は、SHIFTがM&Aを行う目的は次の2点であると語っています。
・IT業界の利益構造を変え最適化する
・優れた技術を持つ会社の事業を拡大する
この目的に基づき、単なる利益の拡大を目指すのではない、「SHIFT流」ともいうべき「M&Aの型」を創り上げているのです。
SHIFT流の「M&A 2つの型」とは
SHIFTが手掛けるM&Aには、「下請け構造脱却型」と「サービス価値・領域拡大型」の、大きく2つの型があります。丹下代表は「この2つの型に当てはまらないM&Aはしない」と言い切るほど重視しています。
それでは、「下請け構造脱却型」および「サービス価値・領域拡大型」とは一体どのようなものなのでしょうか。ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
「下請け構造脱却型」
「下請け構造脱却型」とは、伸び代がある下請け企業を譲り受けるM&Aです。
「下請け構造脱却型」のM&Aでは、営業力や採用力が弱いため大企業の下請け会社となってしまっている会社をターゲットに買収します。そしてSHIFTの強みである営業力により、より上流工程の仕事を受注し単価を上げていきます。
また、SHIFTの有する採用ノウハウやバックオフィス機能を活用し、後方支援的な業務の効率化を図ります。これにより企業としての競争力を上げ、下請けからの脱却を目指していくのです。
「下請け構造脱却型」のM&Aの事例としては、「株式会社システムアイ」の買収が挙げられます。
「株式会社システムアイ」は金融・流通業界に精通したシステム開発業を中心に事業を展開していましたが、元請けではなく下請けでのビジネスが主でした。そのため企業が持っている技術や経験と比べて、低利益型のビジネス構造となっているという課題がありました。
しかしSHIFTにより買収された後は、元請けとしての案件を獲得できるようになり、エンジニアの単価も大幅に上昇。それに伴い人材育成や仕事環境の改善にもコストをかけられるようになり、社員の給料もアップ。企業としての総合的な価値を上昇させることに成功しました。
「サービス価値・領域拡大型」
もうひとつの「サービス価値・領域拡大型」とは、少数精鋭の技術系企業を譲り受けるM&Aです。
SHIFTには営業力や採用力に強みがあると先ほど述べましたが、それ以外にも優れた点があります。それは「職人の技術を標準化し、ITに落とし込んで自動化していく」スキルです。
IT業界にもものづくりの世界と同様、高度な技術を持つ「職人」がいます。そして彼らの技術やノウハウは、やはりものづくりの職人と同様、なかなか人に継承するのが難しいものです。
ですがSHIFTはもともと丹下代表が製造業のプロセス改善コンサルタントを行っていたこともあり、属人的で高度な技術を標準化させることに長けています。SHIFTの手にかかれば、1人の職人の技を何十人・何百人もの人に習得させることや、作業工程を切り出すことでより多くの案件を処理できる体制を作ることができるのです。
「サービス価値・領域拡大型」のM&Aを行った事例としては、「株式会社アッション」の買収が挙げられます。
株式会社アッションは、世界トップクラスのABテストに関するノウハウを有する企業です。しかし当時の従業員は十数名程度。事業の成長や規模拡大を行うにはその人員数がボトルネックとなっていました。そしてただ人を雇えば良いというわけではなく、高度なスキルや経験を伝え、人を育てることが難しいという課題があったのです。
このような状況下で、SHIFTはM&Aを実施。職人でなくてもできる範囲の業務を切り出し標準化することで生産性を向上させています。またアッションが有するABテストのノウハウを活かし、SHIFTの品質テストのラインナップを拡充するなど、高いシナジー効果を生み出しています。
企業価値を下げないM&Aの方法論「SHIFT PMI 100」
このように、SHIFTは積極的なM&Aを行い急速に成長してきました。
M&Aと聞くと、買収先企業の社員から反感を買ったり、思うようにシナジー効果が生まれず企業価値が下がってしまったりする可能性があるようにも思えます。
しかしSHIFTはこれまで十社もの買収をおこなってきましたが、有効的な買収を実現し、これまで一度も減損を出していません。(2020年10月時点)これは偶然ではなく、買収先から喜ばれること、また企業価値を下げないことを方法論として実践しているのです。
では、SHIFTはM&Aをどのように成功させているのでしょうか。
SHIFTが有するM&Aを成功させるための方法論が、「SHIFT PMI 100」です。PMIとは「Post Merger Integration」の頭文字をとったもので、「M&Aによる企業の統合プロセス」を意味します。SHIFTは買収した企業を統合する上で、PMIのノウハウをまとめ定型化しているのです。
「ノウハウ通りPMIを進める」と聞くと、とてもドライなイメージが浮かんでしまうかもしれません。ですがSHIFTのPMIは、人の感情に配慮した手法をとります。
たとえばPMIを実施する上で、頭ごなしに役員をすげ替えたり、制度を統一化したりしようとはせず、既存の企業カルチャーを尊重しながら協力関係を築いていくのです。
またSHIFTでは買収先の社員と飲み会や部活動をともにするなど、積極的に交流も行っています。
このように合理性と感情的な領域をうまく兼ね備え、信頼関係を構築しながらPMIを進めていくのが、損失を出さないSHIFT流のM&Aの秘訣なのです。
買収された企業からも喜ばれるM&Aを
この記事では、SHIFTが手掛けるM&Aの特徴や方法論について紹介しました。
SHIFTでは、「事業承継できた」「より高利益のビジネスができるようになった」「働く社員の給与が上がった」「サービスの品質が上がった・メニューが増えた」などと、買収先の経営陣やその会社で働く社員、そして顧客からも喜んでもらえるような、「誰もが幸せになれるM&A」を手掛けています。
成長企業でPM、ITコンサルタントとして働きたい人はもちろん、将来的に事業の立ち上げ責任者や、グループ会社の役員を目指す方にもSHIFTはピッタリの会社です。